アトリエ

下地イサム

アトリエ

安全地帯の『アトリエ』という歌が大好きです。
高校の時からずっと聴き続けていますが、どんな時に聴いてもずっと僕の心を惹きつけ続けています。「孤独の世界観」ですね。どんなに素敵な文章をたくさん書いたとしても、この楽曲を超えるような「孤独の世界」を表現することはできないのではないかと思ってしまいます。理性の領域ではなく、五感にダイレクトに響いてくるものにはどんな文章も敵わないのかなと、この歌を聴くとそう思えるのです。
あんな風にどす暗くもなく、きらびやかなアコースティックギターの音色に、えも云われない孤独感を感じてしまうというのは、これはもう楽曲の力ですね。聴いていると胸の奥がだんだんと寂寥感に包まれていくのに、それでいて決して重たくない、切ないのにその空気の中にいられたら幸せなのかもしれないと思わされてしまう。そう、その誰もいない屋根裏部屋のアトリエに住みたいとさえ思ってしまうのです。こんなにも切ないのに、聴くたびに静かな幸福感に包まれるという、何とも不思議な楽曲です。メロディーと、声の色彩と、ギターの音色と、音数の加減と、痒い所に手が届くようなオブリガード、サウンドのアンサンブル、全てのバランスが絶妙で、あと一つでも何か他の楽器が音を奏でてしまうと、大きな何かが失われてしまうような、危うい崖っぷちにこれ以上ないというバランスで立っているヤジロベエのような世界です。

小高い丘、森の奥に教会に似たお城のような屋敷があって、中に人が住んでいるかのような生活感を残したままの廃墟。蓋を開けるとすぐにでも音が鳴るようなオルゴール。静寂の中に雨音だけが響く夜。目を閉じて想像すると、誰もいないアトリエが具体的な形を帯びて現れてきます。でもそれが地球上のどの辺なのか、何度想像してもまったくイメージできません。この世には存在しない場所なのかもしれないし、あるいは遠い昔に存在していた場所なのかもしれない。もしかしたらパラレルワールドのような世界かもしれない。すぐ隣にあるのにまったく別の世界。そこだけはイメージのひとり歩きが辿り着くことを許されていないみたいです。まぁ想像魔の僕を、存分に飽くなき想像の世界へと導いてくれる数少ない楽曲であることには間違いありません。
やれやれ喋り過ぎました。
もうこのくらいにしておかないとヤバいな(笑)。
ああ、好きという言葉を超えて好きです『アトリエ』。