すね毛

下地イサム

すね毛

今日の沖縄は少しモヤがかかりながらも晴れています。

いや~、いい天気。

気持ちがいい春の陽気だというのに、どこにも出かけられないので、

これはもうのんびりするしかないと思い、

追い立てられていてやらなければいけないことなんかは完全に無視して、

ベランダで日光浴をしながら力いっぱいウトウトしました。

 

 

すると不意に自分の足のすね毛が目に止まり、何だか急に全部剃り落としたい衝動に駆られてしまいました。

kowaidesu.

sonnajibunga.

今までの人生にこのような感覚というのは一度もなかったんですけどね。

春の草原を思わせるこのすね毛たちを

もし全部剃り落としてしまったらどうなるでしょう?

どうなるもこうなるも、また新しいすね毛たちが生えてくるだけでしょうね。

同じ人間の同じすね毛が。

いや...

でもそれは同じすね毛でしょうか?

あの日さとうきび畑で植え付けしながら土まみれになったあのすね毛でしょうか?

パイナガマビーチでマリンブルーの潮水に浸かったあのすね毛、

風呂場で何万回とボディーソープにまみれてきたあのすね毛たちとは、

まったく別ものの、

この世に初めて顔を出す、新参すね毛たちではありませんか?

こんにちは!すね毛くん。

って、

まだ剃ってませんけどね..

あ、いや、何を言わせるんですか。剃りませんよ。

 

肉体は滅びようとも魂は...

みたいに、

今僕の身体と一心同体のこのすね毛たちを全て滅ぼしたとしても、

また新しい芽が、この新緑の季節に、より一層のたくましさで顔を出してくることを想像すると、なんだかそれだけで元気が出てきました。

40歳を過ぎて衰えゆくだけと思い込んでいたこの肉体に、新しい命のマグマが静かな種火で眠っているのです。

僕はもう段々と居ても立ってもいられませんよ。

頭の中は5枚刃T字カミソリ、あ、いや、

 さようなら、すね毛くん!

 いやちがうって、

立ち向かおうってことですよ。

追われてないでね。

こっちから向かっていくさぁ~。