記念すべき10周

下地イサム

記念すべき10周

何となくウォーキングをしに那覇市内の公園に行ったのがキッカケだった。
その時はジョギングを始めてみようなどとはこれっぽっちも考えていなかったのだが、運動不足を少しでも解消しようとウォーキングからジョギングに変えて少しだけ走ってみたとき、自分の体力の衰えぶりに愕然としたのと、たくさんの人たちがジョギングをしている光景に触発されたのとで、何となく走ってみようかなという気持ちになった。ところが公園の外周を1周走るだけで激しい息切れが起こり、足の筋肉が突っ張って走り続けることができない。鍛えることをしてこなかった体力がこれ以上走ることを拒んでいる感じがした。1キロ弱の外周を1周も走ると、すぐに断念してしまった。情けない気持ちよりも「これはヤバい」という切迫した危機感に襲われてしまった。その危機感こそが僕をジョギングへと導いてくれたのかもしれない。もともと短距離選手だった僕は、長距離が大の苦手なのだ。何をやっても長続きしない自分の性分にも長距離は一番合わないような気がしていた。だからこの年になるまでジョギングを日々の日課に取り入れたことはなかった。あ、いや、正直言うと何度か始めてみようと思い立ったことはあったのだが、3日ぐらい走ると、やっぱりいとも簡単に熱が冷めて断念してしまっていた。
そして今回、もう誰との約束事でもないし、あくまで自分自身の問題、そう、やるかやらないかだけ、続けるも自由、止めるも自由、誰にも咎められることのない真に自由意志の世界なのだ。気負うことなく自分の胸に訊いてみた。そしたら「走りたい!」という素直な気持ちが芽生えていることに気づいた。よし、まあ無理はせずにやってみよう。
1周から2周、2周から3周と、時間をかけながら少しずつ体を慣らして距離を伸ばしていった。本当に情けない話だが、5周の壁がなかなか突破できなかった。5周だけで帰る日々が続いた。
ある日、今日も5周でいいやと思って走っていると、いつの間にか6周、そして7周まで走ることができた。素直に嬉しさが込み上げて来た。体力は少しずつスタミナをまといつつあるぞ。その確かな感覚が満足感につながっていく。
そしてあれからまた長い時間をかけて、今日10周約8キロを走りきることができた。たかが8キロである。多分隣の兄さんは毎日20キロぐらい走っているのかもしれない。でも僕は嬉しい、嬉しくてたまらない。何の自慢にもならない距離だが(笑)、この少しずつの成長が僕を支えてくれる。
さあ、また明日も10周、あさっても10周だ!15周を目指して少しずつ伸ばしていくことにしよう。